ヒメウズ 姫烏頭 （ キンポウゲ科ヒメウズ属 ）

ヒメウズ 姫烏頭 は、国内では関東地方から九州にかけての暖温帯に分布する多年草です。 人家周辺から低山まで、道ばたや石垣の隙間など、やや湿った半日陰などに多く見られます。 成分にプロトアネモニンを含むため、人によっては草の汁でかぶれることがあります。 地下の塊茎は長さ１cmほどの長楕円状で、根生葉と花茎を出します。 根生葉は３出複葉で小葉は２～３中深裂し、裂片は扇状、さらに２～３浅裂して、裂片の先は丸くなります。 葉身は概ね円形で、長さ２～５cmほど、質は柔らか、表面はややくすんだ緑色、裏面は白緑色で紫色を帯び、葉柄には白い軟毛があります。 ときには葉の裂片基部から葉身基部に白い斑紋が出ることがあります。 茎葉の葉身は小さく、短い葉柄で、茎にまばらにつきます。

ヒメウズ 姫烏頭 Semiaquilegia adoxoides ／ syn．Aquilegia adoxoides 撮影・つくば実験植物園

３月から５月に、花茎を伸ばして、草丈１０～３０cmになります。 花茎は紫褐色、細毛が密生し、上部でまばらに枝を分け、先端に小さな花を下向きにつけます。 花弁状の５個はガク片にあたり、白色に淡紅紫色を帯び、長楕円形で長さは５mmほどになります。 本来の花弁はガク片の内側にあり、淡黄色で５個が筒状に並びます。 花弁の基部には、ごく短い距があり、ガク片の間から覗きます。 雄しべは９～１４個、雌しべは棒状で２～４個あります。

（ 左 ） ガクの隙間から距が覗く ／ （ 右 ） 筒状に並ぶ花弁 撮影・多摩森林科学園

ヒメウズ の花の構造は、オダマキ属とほぼ共通しています。 しかし、距が発達しないこと、雌しべの数の違いなどから独立した属とする見解が主流になっています。 他に同属種がないため、ヒメウズ属は１種のみの単型属になっています。 果実は袋果で長披針形、長さは８mmほど、上向きに２～４個がつき、熟すと内側が裂開し、黒褐色の小さな種子を落とします。 和名は小さいことから 「 ヒメ 」 がつき、「 小さな ウズ （ 烏頭 ）」 の意味になります。 「 烏頭 」 とは、トリカブト類の中国の名称 ※１ で、また、その塊茎の母根を指す生薬名でもあります。 花は色も形もトリカブトに似ていないため、塊茎や袋果の形、掌状に裂ける葉の様子を合わせ見ての名前と考えられます。 ※１ 中国の名称 ： 附子ともいう。生薬名では、母根に附く子根を指す。

ヒメウズ （ 左から ）　根生葉　／　未熟な袋果　／　種子放出後の袋果 撮影・東京都

トリカブト交雑種 植栽品 （ 左から ）　根生葉　／　花　／　袋果

属名：Semiaquilegia 、半 semi + Aquilegia オダマキ属 から、ややオダマキ の意味。 種小名：adoxoides 、Adoxa レンプクソウ属 に似た の意。adoxos は目立たない の意味。 synonim属名：Aquilegia、オダマキ属。曲がった距が ワシ 鷲 aquila の爪に似ることから。 2024.03.-2025.03.27.Re 参考書籍等  「 野草図鑑　おきなぐさの巻 」、「 京都府下の山野草 」、「 ワイド図鑑 身近な山野草 」、他  山科植物資料館　https://yamashina-botanical.com/botanical/

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