クズ 葛 （ マメ科クズ属 ）

基原植物名 クズ

生薬名 カッコン （ 葛根 ） [ 局 ]

用途 漢方薬・食品など

秋の七草のひとつに数えられる クズ 葛 は、日本各地に自生する大型の藤本 ※１ です。 昔は、葉を飼料とし、つるでかごを編み、その繊維は葛布 （ くずふ ） ※２ を織る材料にしました。 また、根からは良質なデンプン 葛粉 （ くずこ ） を採るというような色々な利用がされました。 現在では、そうした用途が少なくなり、害草扱いされることが多くなっています。 繁殖力の強さから、世界の侵略的外来種ワースト100 ※３ に ’kudzu ’ の名が入っています。 クズ のつるは、丈夫で長さ１０ｍにもなり、全体に黄褐色の毛を密生します。 葉は三出複葉で互生し、頂小葉はひし形状の広卵形、長さは１０～１８cmになり、浅く３裂し、側小葉は左右非対称です。 小葉に鋸歯はなく先は鋭く尖り、葉の裏面は白色の毛を密生して白緑色になり、長い葉柄があります。 ※１ 藤本 ： とうほん、木本のつる性植物のこと。 ※２ 葛布 ： 静岡県掛川市では民芸品として作り続けられている。 「 かっぷ 」 という地域も。 ※３ ワースト100 ： 国際自然保護連合 （ IUCN ） が定めた。 100 of the World's Worst Invasive Alien Species ８～９月に葉腋から総状花序を立ち上げ、芳香のある赤紫色の蝶形花をつけます。 小花の直径は２cmほど、旗弁は翼弁より赤紫色が淡く、基部には黄色い紋があって目立ちます。 花序の基部側から咲きあがり、長い期間咲き続けるため、基部では未熟な豆果になり、先はまだ蕾という花序も見られます。 豆果は長さ５～１０cmあり、褐色の剛毛が密生します。 種子は長さ３mmほど、植物体からは創造しにくい小さなサイズです。

クズ 葛 Pueraria lobata 花 と 果実 ／ 土手を覆いつくすクズ 撮影・東京都薬用植物園、他

クズ は、盛夏の昼間に、葉を閉じる運動を行うことがあり、「 クズの昼寝 」 などとといわれます。 夜間の就眠運動とは異なり、強い日差しを避けて、水分の蒸発を減らすためのもので、カタバミなどでも見られる現象です。

クズ の根は、長く肥大して、繊維質が多く、良質なデンプンを蓄え、プエラリン puerarin などの成分を含みます。 根の外皮を取り除き、乾燥させたものが生薬 カッコン 葛根 で、５mm角程度に刻まれて用いられます。 発汗、解熱などの目的で漢方処方に配合され、葛根湯では主剤になります。 また、花を採取し乾燥したものを葛花 （ かっか ） といい、煎液は二日酔いに効果があります。 民間では、クズ湯 ※４ にして、風邪の引き始めなどに飲用しました。 ※４ クズ湯 ： 葛粉に湯をそそぎ、砂糖や蜂蜜などをいれる。 練ると初め白濁していたものが半透明になり、これを暖かいうちに飲み身体を温める。

（ 左から ） 掘り出した クズ の根 ／ 生薬 カッコン 葛根 撮影・東京都薬用植物園

葛のデンプンは、根の採取や不純物を取り除くなど作業工程が多いため、純度の高いものほど高価になります。 本来の葛だけから採られたものは、本葛と呼ばれ、最近では、高級な和菓子の製造が主な用途になっています。 和名は、国栖 （ くず ） の人が、葛粉を売り歩いたことで、植物もクズと呼ばれるようになったという説があります。 属名：Pueraria 、人名由来。スイスの植物学者プエラリ Marc N．Puerari に因む。 種小名：lobata 、浅裂した という意味。 2007.-2012.-2021.08.-2025.10.12.Re 参考書籍等 「 生薬単 」、「 ワイド図鑑 身近な野草・雑草 」、「 家庭で使える 薬用植物大事典 」、「 琉球の樹木 」  パンフレット 文化財史跡 「 森野旧薬園の栞 」

葛粉製造の老舗・森野吉野葛本舗の看板と森野旧薬園

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