ガガイモ 蘿藦 （ キョウチクトウ科イケマ属 ）

ガガイモ 蘿藦は、北海道から九州に分布するつる性の多年草で、人家に近い日当たりの良い路傍や、河原の土手などにも見られます。 茎は長さ２ｍほど、葉は対生し、葉身は長卵状の心形で長さ５～１０cm、先は鋭く尖り、全縁で質は厚く、表面はやや光沢があります。 茎や葉を傷つけると、切り口から白色の乳液を出します。 花期は８月ころ、葉腋に総状花序を出し、淡い紅紫色の花を多数開きます。 花冠は５裂して直径約１cmの星形になり、裂片の先は反曲して、花の内側は白色の軟毛が密生します。 雄しべは５個あり、合着して短いずい柱を作り、中心を雌しべが通り、先端はクチバシ状の突起 ※１ になってつきます。 この柱頭風のねじれた突起は、雌しべの先端の突出したもので、本来の柱頭は、花冠の内にある花柱側面に柱頭室としてつきます。 花粉はラグビーボール状の塊状になって、２個づつつきます。 ガクは全裂して、ガク片は細く先は尖り、５個あります。 ※１ クチバシ状の突起 ： 「 日本の Milkweed ガガイモ（ガガイモ科）における花の雄花両性花同株性表現と昆虫による花粉塊授受、とくに花の形態との関係 」 田中肇、秦野武雄、金子紀子、川内野姿子、北村治、鈴木百合子、多田多恵子、矢追義人（ 2006 ）

ガガイモ 蘿藦 Cynanchum rostellatum synonym Metaplexis japonica 撮影・東京都薬用植物園

果実は披針形の袋果で、長さは約１０cm、表面にイボ状の突起があり、熟すと縦に裂開します。 種子は扁平な楕円形に翼と長い種髪がつき、果実内に縦に並んで入ります。 種髪は乾燥すると大きく広がって、風を受けてよく飛び、昔は、この種髪を朱肉の印肉として使用しました。 薬用には、外傷の止血に用いたことがあるとされます。 全草、特に根が有毒で、誤食をすると嘔吐します。 和名 ガガイモ の 「 芋 」 は、根茎のことではなく、果実の形から来ています。 別名の 鏡芋 カガミイモ が訛ったとか、葉の形がすっぽん 「 ガガ 」 に似るからとも諸説あり不明です。 「 蘿藦 」 は、漢名をそのまま当てたものです。

古事記に載るガガイモ --- 天之蘿藦船 （ あまのかがみのふね、あまのらまのふね ） に乗って、小さな神様がやって来た。 名前は、スクナビコナ （ 少名毘古那 ※２ ） といい、 オオクニヌシ （ 大国主 ） の国造りを手伝い、後に常世国に去った。--- 「 蘿藦 」 が、ガガイモのこと、古代の人は割れた果皮を小さな神の乗る船にみたらしい。 ※２ 少名毘古那 ： スクナヒコ・少名彦、スクナヒコナ・少名彦名 の記述もある。 属名：Cynanchum 、犬の cyno～ ＋ 窒息する、殺す anchein 、  犬に有害であると見られていた種の古名から とされる。 種小名：rostellatum 、小さいクチバシ （ 嘴 ） のある rostellatus という意味。 synonym属名：Metaplexis 、中間の meta～ ＋ 編んだ、込み入った plexus の合成語。 synonym種小名：japonica 、日本の という意味。 2008.-2012.-2021.03.-2025.12.6.Re 参考書籍 「 野草図鑑 つる植物の巻 」、「 ワイド図鑑 身近な野草・雑草 」、「 野草の名前・夏 」、「 新牧野日本植物圖鑑 」

（ 左から ） 果実の中の種髪 ／ 種子 ／ 広がった種髪

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