リンドウ 龍（竜）胆 ／ エゾリンドウ ／ フデリンドウ （ リンドウ科 ）

和名は、中国や朝鮮半島に分布する、同属の生薬名が由来になっています。 苦いことで知られる熊の胆嚢・生薬 ユウタン （ 熊胆 ） より、さらにその根が苦いとして、 熊より強い 「 龍 」 の字があてられて、リュウタン （ 龍胆 ） になりました ※１。 この龍胆の読みが訛って リンドウ になったとされます。
リンドウ 龍胆 は、本州～九州の山野に自生する多年草です。 生薬になる トウリンドウ の変種で、変異が多いことでも知られます。 茎はふつう暗紫色で、草丈は２０～９０cm、分岐はなく、直立または斜上します。 葉は対生して無柄、葉身は卵状披針形、先は長く尖り、基部は丸くなります。 葉縁にはルーペが必要な細かい突起があり、ざらつきます。
秋から初冬に、主に茎頂に数個の花がまとまってつき、上向きに咲きます。 花冠は長さ４～６cmの釣鐘型、青紫色で内側には紫褐色の斑点がつき、先は５裂し、裂片の間には小さな副片があります。 雄しべは５個、雌しべは１個あり、柱頭は２裂します。		 リンドウ 撮影・東京都薬用植物園
Gentiana scabra ver．buergeri
属名：Gentiana 、イリュリア Illyria の王ゲンティウス Gentius に由来。
種小名：scabra 、凹凸のある、ざらついた という意味。葉縁に細かい突起があるため。
変種名：buergeri 、人名由来。日本植物の採集家ブュルゲル Heinrich Burger へ献名。
※１ 竜胆 ： イヌホウズキ Solanum nigrum 、生薬名 リュウキ （ 龍葵 ）に葉が似るためとする説もある。

エゾリンドウ 蝦夷龍胆 は、中部以北～北海道の湿地帯に生える多年草です。 茎は淡緑色で直立し、草丈３０～５０cmになる大型のリンドウで、ふつう生花店で販売される切花は本種です。 葉は無柄で対生し、葉身は披針形で先は尖り、縁のざらつきはなく、淡い緑色をしています。
花冠は釣鐘型で青紫色、内側には緑褐色～暗紫色の斑点があり、先は５裂し、裂片の間に副片があります。 ９～１０月、茎頂と上部の葉腋にも花をつけ、花冠の先端はあまり開かずに咲きます。

種小名：triflora 、三つ tri、花 （ 複数 ） flores
 三つの花の という意味。
変種名：japonicaa 、日本の という意味。		 エゾリンドウ 箱根湿生花園
Gentiana triflora var．japonica

フデリンドウ 筆龍胆 は、本州、四国、九州にある越年草です。 リンドウやエゾリンドウが湿気や湿地を好むのに対し、本種は林床など、やや乾いた土地に自生します。 茎は暗紫色で、基部から分枝して直立し、草丈は５～１０cmになります。 葉は対生して葉身は１cmほど、広卵形で先はやや尖り、暗紫色を帯びることがあります。
花期は４～５月、花冠は漏斗状の釣鐘形で、先は５裂し、裂片の間にある副片は先端に浅い切れ込みが入ります。 花冠は淡青色から青紫色で、内側に暗紫色の斑点があります。 雄性先熟で雄しべは５個あり、花粉の放出後、雌しべの柱頭が２裂して雌性期になります。 萼筒の裂片は細長く、先は尖り、花筒に添うようにつきます。
名前は、曇天などで花がすぼんでいる様子を筆に例えたとも、直立する茎頂に花がまとまってつくのを筆に見立てたともいわれます。 花冠の白い品種に、シロバナフデリンドウ Gentiana zollingeri f．albiflora があります。

種小名：zollingeri 、オランダ領インドの植物採集をした ツォリンガー H．Zollinger に因む。
フデリンドウ Gentiana zollingeri 筑波実験植物園、他 シロバナフデリンドウ f．albiflora

トウリンドウ 生薬名： リュウタン （ 龍胆 ） [ 局 ] 用途： 漢方薬

当分の間　　です。

生薬としてのリンドウ、リュウタン （ 龍胆 ） は、西欧のゲンチアナ Gentiana lutea に対応する苦味健胃薬です。 基原植物は、中国や朝鮮半島などに分布する、トウリンドウ G．scabra、マンシュウリンドウ G．manshurica、トウオオヤマリンドウ G．triflora の３種です。 かつては リンドウ G．scabra ver．buergeri なども基原植物でしたが、流通実態がないことで対象から外されました。 傾向としては、リュウタンの使用量は減少して、ゲンチアナが増加しています。

リュウタン の苦味配糖体ゲンチオピクロシド gentiopicroside は、その苦味で舌や脳が刺激され、唾液、胃液、胆汁の分泌を促すことが知られています。 胃腸の働きが良くなるので、食欲不振、消化不良などに効果があります。 カプセルの普及で服用の際、飲みにくい想いをすることが減りましたが、リュウタンや センブリについては、苦味を感じないと効果が得られない生薬になります。

2004.-2013.-2021.01.11.Re

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