ヘクソカズラ 屁糞蔓 ／ ヤイトバナ 灸花 （ アカネ科ヘクソカズラ属 ）

ヘクソカズラ は、北海道から沖縄に分布し、日当たりの林縁などに自生するつる性の多年草です。 茎には軟毛があり、葉は対生し、葉身は楕円形～狭卵形、長さは４～１０cmで全縁、先はふつう尖り、基部は心形～円形です。 葉の裏には軟毛がつき、長い葉柄があって、托葉は左右が合着して、三角形になっています。 ７～９月に、葉腋から花序を出し、長さ１cmほどの筒状の花を房状につけます。 花冠の先端は５裂して平開し、外側は灰白色、内側は暗い赤紫色、白い綿毛がつきます。 雄しべは５個、花糸が短いため花筒の外に出ることはなく、花柱は２個あって、花冠から突出します。

ヘクソカズラ 屁糞蔓 Paederia foetida syn． P．scandens var．mairei 撮影・東京都

果実は球形で、秋が深まる頃、艶のある黄褐色に熟し、２個の種子が入ります。 冬になると、ヘクソカズラ の残されたままのきれいな果実が目立ちます。 本種の最も分かり易い特徴は、全草にある不快な臭気です。 万葉集にも、クソカズラ ※１ の名で、歌に詠まれ、時代が過ぎると、「 屁 」 が上乗せされました。 悪臭の素は、昆虫の食害を防ぐための忌避物質になっていて、果実にも含まれます。 細胞が傷つけられることで、細胞内にある硫黄化合物の成分が分解して揮発性の臭気を生じます。 民間薬の領域 （ 生薬名・未設定 ） で、果汁をしもやけやあかぎれなどに利用しました。 「 治療 」 にあたっては、相当な臭気に身をさらすことになります。 可哀そうでない別名もあります。 ヤイトバナ 灸花 ※２ は、花冠内側の赤紫色を、灸 （ きゅう、ヤイト ） に見立てたもの、 サオトメバナ 早乙女花 は、花を早乙女笠に見立てたといわれます。 また、子供が鼻の頭に花を乗せる遊びから、天狗花 という別名もあります。

※１ クソカズラ ：  皂莢に　延 （ は ） ひおほどれる屎葛　絶ゆることなく　宮仕せむ 　高宮王  --- 皂莢 （ そうきょう ） にまといついたクソカズラのように、絶えることなく宮仕をしよう ---  酒宴の座興で、詠んだものといわれる。 皂莢は、マメ科のサイカチかジャケツイバラとみられている。 ※２ ヤイトバナ 灸花 ： こちらを標準和名とするものもある 属名：Paederia 、悪臭 paidor 全体に悪臭のあることから 種小名：foetida 、悪臭のある foetidus という意味 synonym種小名：scandens 、よじのぼる という意味 synonym変種名：mairei 、植物採集家、仏人宣教師マイレ Edouard E．Maire に因む 2005.-2013.-2021.05.-2025.03.13.Re 参考書籍  「 野草図鑑　つる植物の巻 」、「 京都府下の山野草 」、「 ワイド図鑑 身近な野草・雑草 」、「 したたかな植物たち 」

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