フタバアオイ 双葉葵 （ ウマノスズクサ科カンアオイ属 ）

フタバアオイ 双葉葵  は、福島県から九州に分布し、山地の湿った林床に自生する日本固有の多年草です。 和名は葉が２枚ずつ出ることからつき、別名のカモアオイ 賀茂葵は、賀茂神社の葵祭で葉を飾ることによります。 徳川家の 三つ葉葵の紋 は、本種の葉を３枚組み合わせたものです。

地下茎が長く、地を横に這って広がることで、しばしば大きな集団をつくります。 茎は多肉質で紫褐色、茎の先端に長い葉柄がある葉をつけ、草丈は１０～２０㎝になります。 葉は対生状に２葉つき、葉身は長さ４～８㎝の卵円心形、全縁で質は薄く、葉の先端は尖ります。 心形基部の側片は半円形に張り出し、両面とも白い短毛がつき、葉脈は窪んで明瞭です。

フタバアオイ 双葉葵 Asarum caulescens 撮影・東京都多摩地区、他

３月から５月にかけて、２つの葉の間から２～３cmの花柄を出し、先端に紫褐色の花を１個つけ、地面近くで下向きに咲きます。 花被 （ ガク ） の基部側は融合して壺状になり、先側の半分は三角形の裂片で、咲き初めると強く反転して基部側の外面に重なります。 花の直径１．５cmほど、花柱は６個あり、合着してひとつの柱状になり、先端では６個の柱頭をつけます。 雄しべは１２個、始め花糸は反転して葯を基部側（花の奥）に向けているのが、次第に立ち上がると、葯を柱頭の傍に近づけます。 葯を柱頭に着けるという雄しべの動きは、自家受粉を目的としているとされています。 フタバアオイ にはトビムシなどが訪花するものの、送粉者としての働きは不明といわれます。 また花は送粉者の誘引をしないとされ、研究 ※１ によれば、自家受粉を行っている可能性が高いとしています。 果実は６月中旬に結実します。 ※１ 研究 ： カンアオイ属４種の送粉様式 ( 抄録 ）  https://www.jstage.jst.go.jp/article/esj/ESJ51/0/ESJ51_0_481/_article/-char/ja/

（ 左から ） 三角状の裂片 ／ 開花、葯は奥に向く ／ 花糸が立ち上がり葯が柱頭を囲む

宮城県など一部の地域では、絶滅危惧Ⅰ類に指定されています。 属名：Asarum 、不明。諸説ある。 種小名：caulescens 、茎のある という意味。 2024.02.-2025.03.15.Re 参考書籍  「 ワイド図鑑 里山・山地の身近な山野草 」、「 野草図鑑　はこべの巻 」、「 京都府下の山野草 」、「 野草の名前・春 」

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