| コブシ 辛夷 ／ タムシバ 匂辛夷 ／ ハクモクレン 白木蓮 （ モクレン科 ） |
| コブシ、タムシバ、ハクモクレン | 生薬名： シンイ （ 辛夷 ） [ 局 ] | 用途： 漢方薬 |
|
コブシ 辛夷、拳 は、北海道から九州までの山地に生える落葉高木です。
樹高は１０～２０ｍになり、他の木々が芽吹く前の３月から４月にかけて、葉の展開に先立って白い花を咲かせます。
葉は互生し、葉身は倒卵形で全縁、先端は尖ります。 コブシ の蕾は、毛が密生した３個の 「 袋 ※１」 をかぶります。 「 袋 」 は苞葉と托葉が合着したもので、多くは開花すると外れて落ちます。 花には芳香があり、全開して花径６～１０cmになり、花の下にひとつの小さい葉を展開するのが特徴です。 花被片は９個あり、内側の大きな花被片６個は外面が赤紫色を帯び、外側の小さい花被片 （ ガク片 ） ３個は広線形です。 雄しべと雌しべは多数あって、花托にらせん状につき、雌しべは上部に柱状につき、下部に雄しべがつきます。 雌性先熟で、雌しべが柱頭をのばした後に、淡いクリーム色の雄しべが花粉を出します。 ※１ 袋 ： 植物形態学/生物画像集 より |
コブシ 辛夷、拳 Magnolia kobus 撮影・神代植物公園、他 |
|
果実は長さ１０cmほど、袋果がいくつか結合した集合果で、不定の長楕円形をしています。
９～１０月頃に、裂開して、朱色の種子がのぞきます。
種子は扁平状の腎形で、軽く引くと、珠柄が白い糸状になって、種子を垂れ下げます。 コブシ の名前の由来は、果実 （ 集合果 ） の形が、子供の握り拳に似るとする説、 膨らみ始めた蕾の形を拳に見立てたとする説があります。 別名「 田打ち桜 」 は、田植え前に田を掘り起こす作業を始める時期に咲くとしての呼び名です。 他にも「 田植え桜 」など、農作業に関連した地方名があり、広い地域で農業の指標にされていたと見られます。 生薬シンイ （ 辛夷 ） は、開花前の花蕾を採取して、乾燥したものです。 シンイは、精油成分のシトラール、メチルオイゲノールなど、また、アルカロイドのコクラウリン coclaurine を含有します。 鎮静・鎮痛効果があり、漢方薬では鼻炎、蓄膿症や頭痛などに用いられます。 もともとは、中国産の辛夷代用品として、次項の タムシバ ととも国内で開発されたものです。 属名：Magnolia 、人名由来。フランスの植物学者マニョール Pierre Magnol に因む。 種小名：kobus 、和名のコブシから。 |
 |
|
タムシバ 匂辛夷 は、本州の日本海側と西日本以南に多く、山地に自生する落葉小高木です。
ふつう４～５ｍの樹高で、コブシ と同様に、葉の展開に先立って開花します。
葉は互生し、葉身は コブシ より幅の狭い広被針形で全縁、先は尖ります。 花期は４～５月で、花のサイズはコブシより小さく、花弁の幅がやや狭いものの、花被片 （ 花弁６、ガク片３ ）は同じ数で、外見はよく似ています。 ガク片が白く細い花弁のように見えること、花の直下の葉が展開していないことで区別ができます。 農作業の指標として、タムシバ 匂辛夷 と コブシ は同様にみなされていて、この点でも両種は似ています。 葉は、噛むと甘味があるため、サトウシバやカムシバ 「 噛む柴 」 の別名があります。 タムシバ （ 田虫葉 ） はカムシバが訛ったものとか、タムシ状の白い斑点があるからといわれています。 また、枝に芳香があることからニオイコブシの別名もあります。 開花前の花蕾を採取して乾燥し、生薬のシンイとします。 種小名：salicifolia 、ヤナギ属 Salix ＋ 葉 folium から、ヤナギ属のような葉の という意味。 |
タムシバ 匂辛夷、田虫葉 Magnolia salicifolia 撮影・東京都薬用植物園
|
|
ハクモクレン 白木蓮 は、中国のマグノリアを代表する落葉高木で、樹高１０～１５ｍ程に成長します。
葉は互生し、葉身は倒卵形で縁は全縁、先は短く尖ります。 ３～４月に、葉に先立って、コブシよりやや大きな白い花を咲かせます。 蕾は、毛の密生した苞葉２個に包まれ、苞葉は開花すると外れます。 花は上向きに咲いて平開することなく、開花時に花の下に葉をつけることもないので、コブシ との区別ができます。 花弁は厚みがあって６個つき、ガク片３個は花弁と似た形状です。 雌しべは多数あり、花托の上部に雌しべ、下部に雄しべが螺旋状につきます。 ハクモクレン の花蕾は、生薬シンイの基原植物※２ のひとつです。 なお、中国でいう「 辛夷 」 は、ハクモクレンのことです。 ※２ 生薬シンイの基原植物 ： 全部で５種が基原とされる。 あと２種は、ボウシュンカ 望春花 M．biondii と、マグノリア・スプレンゲリ M．sprengeri （ いずれも中国産 ）。 種小名：denudata 、裸の、露出した という意味。 シノニム種小名：heptapeta 、７花弁の という意味。９弁とするところを間違えた。 2005.-2014.-2021.02.15.Re |
ハクモクレン 白木蓮 Magnolia denudata syn．M．heptapeta 撮影・東京都薬用植物園、他 |
| このページのトップへ↑ |