ムクロジ 無患子 ( ムクロジ科ムクロジ属 )

ムクロジ 無患子 は、本州中部以西の暖地の山野にある落葉高木です。 葉は小葉4~6対の偶数羽状複葉で、長さは40~70cmになり、互生します。 小葉は長さ7~15cmの卵状長楕円形、全縁、紙質で光沢はなく、先は尖ります。 本来は暖地から亜熱帯の樹木ですが、関東地方でも植栽され、秋には葉が黄色く色づきます。

6月から7月初め、枝先の円錐花序に、淡い黄緑色の小花を多数咲かせます。 小花は径4~5mmで、花弁およびガク片は4~5個、花序には雄花が多く、雄しべは10本ほど、同じ花序に少数の雌花が混在します。 雌花の子房は3心皮からなり、ふつう結実するのは1個だけで、他は痕跡として果実の上に蓋状になって残ります。
果実の直径は2cmほど、葉が紅葉する頃に、あめ色に熟し、果皮の中には直径1cmほどの黒い種子が1個入っています。 果実は一度に全部落ちることはなく、翌年の春まで少量ずつ時間をかけて落ち続けます。 種子は非常に硬く、磨いて数珠に加工したり、最近は見ない追羽根の材料にされます。
ムクロジ 無患子 Sapindus mukurossi 撮影:東京都薬用植物園
ムクロジの果皮にはサポニンが含まれ、昔は、果皮を集めて洗剤として利用しました。 石鹸のような洗浄力はないものの、簡単な汚れは落とすことができます。 サポニン成分は去痰に用いられることがあります。 ムクロジも延命皮 ( えんめいひ ) の生薬名で使用されましたが、胃腸障害をおこす毒性があることが分かり、現在は使われなくなりました。
( 左 ) 未熟な果実  ( 中央 ) 果実のフタは不稔の心皮痕跡  ( 右 ) 黒い種子
ムクロジの和名は、漢名の音読みが訛ったものとされます。

属名:Sapindus 、石鹸 sapo + インドの indicus 、界面活性作用があることから。
種小名:mukurossi 、和名のムクロジの音から。

2014.-2021.03.-2025.02.22.Re
参考書籍  「 ワイド図鑑 身近な樹木 」、「 琉球の樹木」、「 生薬単 」、他
3心皮とも果実になる例 / ムクロジの紅葉 撮影:東京都薬用植物園

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