トックリキワタ 徳利木綿 （ アオイ科パンヤノキ属 / 旧パンヤ科）

トックリキワタ 徳利木綿 は、南アメリカ中南部の亜熱帯地域に分布する落葉高木です。 若い木の樹皮は緑色で、幹には多数の鋭いトゲがあり 、成長すると樹皮は褐色に変わりトゲは目立たなくなります。 樹高は２５ｍに達し、幹の下部がトックリ状に膨らむという特徴があります。

トックリキワタ （ 中央 ） 緑色の若木 ／ （ 左 ） 成長した木 撮影：海洋博記念公園、他

葉は互生し、長い葉柄がある掌状複葉で、小葉５～７個、不明瞭な小葉柄がつきます。 小葉は長楕円形で、長さ６～１５cm、先は細くなって尖り、縁は低鋸歯、ときに全縁に近くなります。 沖縄の花期は１０月から１２月上旬まで、その花期の途中で落葉する性質があります。

花は５弁花で、花径は１０～１５cmになり、花弁の縁は波打ち、先端部は紅紫色、基部は淡黄色で暗紫色の斑点があります。 花の中央にある紅紫色の筒は、雄しべ５個の花糸で作られた雄ずい筒で、長さは５cmほど、筒の先端部を淡黄色の葯が囲みます。 雌しべは１個、花柱は雄ずい筒を通りぬけて突出し、先端に紅紫色の柱頭をつけます。 花期の途中で落葉すると、木は紅紫色 （ まれに白花もある ） の花で彩られて、一段と目立ちます。

トックリキワタ 徳利木綿 Ceiba speciosa 別名 ヨイドレノキ 撮影・咲くやこの花館

果実は楕円形の蒴果で、長さは１０～２０cm、果皮は初めの緑色から、熟すと緑褐色になり樹上であるいは落ちて裂開します。 種子は綿状の繊維に包まれて多数が入り、大きさは７、８mm、黒褐色で全体に低い突起がつきます。 果皮が裂開して外れると、綿の繊維は膨張し、バラけながら緩く包み込んだ種子と一緒に、風で飛ばされます。 ワタ の種子と異なり、繊維との結びつきが弱く、簡単に零れ落ちます。 種子を包む綿は、座布団やクッションの詰め物として利用されます。 国内の植物園では、現地名のスペイン語名 パロ・ボラーチョ Palo Borracho ※１ を直訳した ヨイドレノキ （ 酔いどれの木 ） として紹介されることがあります。 一説には、膨らんだ幹を、お腹の出た酔っ払いに見立てたものといわれます。 和名の トックリキワタ は、琉球政府の農業技術者・天野鉄夫氏による命名です。 同氏は1964年にボリビアから種子を持ち帰り、自宅で栽培したのが、日本への初渡来とされます。 天野邸の株は 「 天野株 」 と呼ばれ、沖縄都市モノレール・おもろまち駅前に移植保存されています。

天野株

※１ Palo Borracho ： Ceiba speciosa 以外にも、国内の植物園では、C．insignis （ 花は白い ）、C．ventricosa （ 花は黄色 ） も同じ名前で呼ばれることがある。 属名：Ceiba、南米の現地名を由来としている。 synonym属名：Chorisia、人名由来。 種小名：speciosa、美しい、華やかな という意味。 2021.10.-2025.05.16.Re 参考 「 沖縄の身近な植物図鑑 」、「 沖縄の樹木 」、天野株銘板、他 筑波実験植物園・植物図鑑・ヨイドレノキ　https://tbg.kahaku.go.jp/recommend/illustrated/index.php 咲くやこの花館・植物図鑑・トックリキワタ　https://www.sakuyakonohana.jp/botanicalbook/

トックリキワタ Ceiba speciosa synonym Chorisia speciosa 撮影地・沖縄県

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