ギョウジャニンニク 行者忍辱、行者大蒜 （ ヒガンバナ科ネギ属 ）

ギョウジャニンニク 行者忍辱 ※１ は、深山の林床に生える多年草で、北海道から近畿地方付近に分布します。 ふつう葉は２個、ときに３個が根生し、葉身は楕円形から長楕円形、長さは２０～３０cm、表面は深緑色で無毛です。 先端は鈍等、基部は次第に幅が狭まり、柄になって葉鞘に続きます。 地下の鱗茎はラッキョウに似た円筒形で、長さは５cmほど、古い葉鞘が褐色の繊維になって鱗茎を包みます。 名の通り、強いニンニク臭があります。 ※１ 忍辱 ： 仏教用語。困難を耐え忍ぶ意味。 ニンニクの語源に、臭いを堪え忍んで食べるからという説もある。 初夏に１本の花茎が出て、長さ３０～５０cmになり、先端に散形花序をつけます。 花序の基部には薄い総苞片が２～３枚つき、花は花序の上部から咲き始め、最盛期は球形状になります。 小花は暗紫色から暗緑色を帯びた小花柄があり、長さは１５mmほど、花被片は６枚、白色から淡紫色で長さは５～６mmほどです。 雄しべは６個、花被片から突出して目立ち、葯は黄緑色です。 雌しべは１個、子房は暗緑色の卵形が３個 （ ３室 ） ついて、中央部から花柱が出ます。 果実は蒴果で、多数が結実すると、今度は果実が集まって球形状になります。 種子は黒色、直径３㎜ほどの卵形で、１室に１個入ります。

ギョウジャニンニク 行者忍辱 Allium victorialis subsp．platyphyllum 撮影・東京都薬用植物園

鱗茎や若葉はニンニク風味の山菜とされます。 和名は、山中で修業中の行者が滋養をつけるために食べたことが由来とされます。 反対に、栄養がつき過ぎて修行の妨げになるとして、行者の食用を禁止したという説もあります。 ニンニク臭は、ニンニク Allium sativum の成分と同じ アリシンによるものです。 アリシン は強い抗菌・抗カビ作用がありますが、過剰に摂取すると、胃腸炎を起こすこともあります。 行者の食用禁止説でなくても、食べ過ぎは注意が必要です。 また、ギョウジャニンニク と、他の植物を間違える誤食による中毒例 ※２ があります。 誤認した種には、イヌサフラン、コバイケイソウ、バイケイソウ、スズラン があります。 時期になると栽培品が販売されることもあり、食べたいときは購入する方が賢明です。 ※２ 中毒例 ： 厚生労働省参照  自然毒のリスクプロファイル・高等植物毒 属名：Allium 、ニンニクのローマ時代の古名。臭うの意味の alere または halium 由来とされる。 種小名：victorialis 、勝利の という意味。 亜種名：platyphyllus 、広い葉の という意味。広い platy～ ＋ 葉 phyll から。 2014.-2020.10.-2025.10.22.Re 参考書籍等 「 野草図鑑 ゆりの巻 」、「 京都府下の山野草 」、「 ワイド図鑑 身近な山野草 」、「 野草の名前・夏 」

柔らかい若葉 （ 食品 ） ／ 総苞に包まれた蕾 ／ 小花・子房

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